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 宝島社の「このマンガがすごい」のオンナ編部門1位、「講談社漫画賞」の第2回マンガ大賞など多くの賞を受賞した『ちはやふる』がついにテレビアニメ化決定!!(2011年10月から放送予定)。今回のアニメ化を受けて原作に興味を持った人のために、以前書いたコミックス1~2巻のレビューを再録します。


ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)
(2008/05/13)
末次 由紀

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 『ちはやふる』は、”競技かるた”に青春をかける高校生男女たちの成長を描いた文科系スポ根マンガだ。”競技かるた”という、一般にはあまり知られていないニッチな世界を描いて読者の関心を惹き付けるには通常より多くの労力を要するものだと思うが、作者の”かるた”への情熱があればこそ成せる業なのか、作者はマンガの持つ表現力を最大限に活かして”競技かるた”の世界へと読者を誘ってくれる。

 確かな画力と巧みなコマ割については言うまでも無く、ドラマを展開させるための基本に忠実なストーリーテリングが面白さに拍車をかける。そのまま主人公の女の子・千早(ちはや)の性質を表しているかのような、アクセルがゆるむことなく展開するスピード感あふれる物語はしかし抜群に安定感があり、ページをめくる手が止まらない!人物を捉えるアングルも秀逸であり、たとえば第一話で新(あらた)の研ぎ澄まされた集中力を表すため、畳の上に並んだかるたを透かして見ているかのようなシーンなどは白眉だと思う。また、オープニングの「お願いだれも 息をしないで」という張り詰めた緊張感のなかから次のコマで見開きの2ページを使って大胆に力強くアクションを起こさせるその構図も素晴らしく、”競技かるた”が備える二面性、”静と動”を端的に表現されている。作者のマンガ表現力の高さが窺える。

 これまで特に熱中するものが無く他人の夢を願うばかりかった小学生の女の子・千早が、かるたの全国大会に毎年優勝するほどかるた競技の才に富む新を通して「かるた」の面白さに気がつくところから千早の人生の時計の針が動き始めるのだが、学校のかるた大会で人生初めての賞状をもらって誇れるものができたにもかかわらず、尊敬していた姉からはダサいと言われ、親にも認めてもらえず、ひとり涙を流す。

 しかし”一生ものの宝”、つまり仲間ができた千早は、家庭内での孤立感など大した問題では無かった。勉強もスポーツもできる幼馴染の男の子・太一を巻き込んで3人はチームを組み、絆を深めるものの、それぞれの家庭の事情によって小学校卒業と同時に早くも3人は離別してしまう。だが「3人でまたかるたをやる」という思いだけは引き離せなかった。1巻のオープニングで袴を着てかるたをやる高校生の千早が登場するが、すぐさま「まだ情熱を知らない」小学校時代へと場面を差し替え、千早が競技かるたに抱く情熱の”原風景”を丸々一巻と半分を使って掘り下げて描いたところで2巻で高校時代へと突入するこのあたり、計算されているなぁと思う。

 そして小学校時代に仲間と誓い合った、”3人でまたかるたをやる”という思いが物語の大きな推進力となる。圧倒的な強さを誇る新を千早が最も尊敬する対象、さながら”かるたの神様”のように配置しているからこそ理想と現実のギャップに苦しむという一連の構図・展開はさして珍しくは無いが、やはりぐいぐい読ませる。それは無駄にシーンを引き延ばすことはしない、展開の早さと潔さが一役買っているといえるだろう。そして2巻の終わりでは、これまで単にスポーツとして描かれてきた”かるた”の文化的な側面が呉服屋のクラスメイトの登場によって語られるにようになる。それぞれの”かるた”の背景が物語を今後奥行きのあるものにしてくれるに違いない。単なるスポ根マンガではなく文科系スポ根と呼ばれるゆえんはここにあるような気がする。

 コマの周りに花が咲いているシーンがあると「うわぁ少女マンガだなー」と思うけれど、恋愛恋愛とかまびすしい少女マンガが多いなか、恋愛的要素がなるたけ抑えられている点もポイントが高い。しかしながらその一方で、高校生となった千早が”無駄美人”と呼ばれているところや無防備に太一に抱きつくところからも分かるように、まだ自らが女であることを自覚していないような、千早に子どもっぽさを残しておきながらもやはり恋の萌芽を予感させずにはいられず、「で、太一と新のどっちとくっつくのだろう?」と読者に下世話な期待を喚起させる点も面白いなと思う。ただ恋愛要素はノイズになりやすいので、表立って描かれることは無いだろう。少なくとも美女×イケメン=恋愛という通り一遍な方程式はこのマンガには通用しない。これもひとえに作者の”かるた”への愛だろうか?

 画力、コマ割、物語構成力などいずれの要素も一定以上の水準であり、努力に友情、成功と挫折と、そしてまだ感情の水面下にある恋愛と、ドラマに必要なものが詰まった『ちはやふる』は、もちろん女子だけに読ませておくのは勿体無い力作です。掛け値なしに面白い!

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