上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 日本のアニメ業界の衰退に歯止めをかけるためにも若手の才能を伸ばす機会を作ろうという構想のもと立ち上げられた「若手アニメーター育成プロジェクト」。そのプロジェクトの成果を示す”お披露目会”として参加した4作品が3月5日~11日までの期間限定で上映されるが、若い才能に目がない自分は矢も盾もたまらず劇場まで足を運んだ。ホンネを言うなら「もっと実験的な作品があってもよかったかな・・・」とは感じたけれども、概ね満足。なかでも滝口禎一監督の『おぢいさんのランプ』は出色の出来栄えだろう。
 
 文明開化時代ランプ売りとして身を立てる青年の成長を描いた『おぢいさんのランプ』は、30分という短い時間でありながら起承転結にメリハリを利かせたドラマツルギーの好例であるが、いい映画の影にいい原作あり、本作は新美南吉作の同名児童文学が基になっている。

 児童文学らしく、wikipediaの”あらすじ”で物語の全容が語られているほど短いお話ではある。しかし、当時の風俗、四季折々の色に染まる風景、そして何よりも、ランプが発する熱のあたたかさが作品に彩りを与え、アニメーション的な要素は薄いものの、実に滋味あふれる映像作品に仕上がったのではないかと思う。

 特に印象深く感じたのは、かつて「村を明かりでいっぱいにするんだ」と目を輝かせながら語った少年が、ランプ売りの立派な青年となってその夢を果たしたはずなのに、電気の登場によって自己の利権が奪われそうになると手のひらを返し、他人に嘘を吹き込もうとさえしたシーンだ。現実を生きるために必死なこの人間臭さがいいし、そしてさらに自分が発した一言による”気持ちの矛盾”にも人間臭さがあふれていて実にいい。シンプルに生きるのは存外難しい。

 約130年前の日本が舞台であっても、抱えるテーマには普遍性がある点が、やはりこの作品の長所だろう。新たな技術が誰かの仕事を奪う、という構図。乱暴な言い方だが、ともすればあのランプ屋は今日の全ての職業に置き換えられることができるかもしれない。なんといっても、日々何かがアップデートされ、古いものは駆逐されてしまうのが世の常なのである。仕事の未来は人生の未来。いまに安住せず、過去と訣別し、閉塞感を打破するだけの勇気を与えてくれるような作品だ。

 『おぢいさんのランプ』はMBSで3月12日(土)26:58~放映。その他作品も放映予定あり。この機会にぜひ。



スポンサーサイト
コメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。