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フォロー・ミー

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 1973年に日本で公開され多くの映画ファンの心に足跡を残したらしいイギリス映画『フォロー・ミー』は、公開が終わってから昨年度の「午前十時の映画祭」に再びその姿を表すまで実に37年間ものあいだリヴァイバル上映はおろかパッケージ化もされていなかったが、いまも衰えぬその人気に背中を押されたのか、去年11月にようやくDVD化した。そしてDVDを手に入れた。見た。驚いた。今は亡き映画評論家の淀川長治さんをして「サスペンス映画の教科書」と言わしめた『第三の男』のキャロル・リード監督が、まさかこんなにハートフル、かつ切ないロマンス映画を遺していたなんて!!我ながら不覚。

 公認会計士のチャールズは偶然知り合った無知で美しい女性のベリンダと結婚するが、ベリンダの自由奔放な振る舞いがチャールズを次第に疑心暗鬼に陥らせ、探偵に彼女の浮気調査をさせる。男がいるのか、いないのか。チャールズがもやもやとした不安を抱える一方で、ベリンダを追跡した白いトレンチコート姿の探偵は彼女の抱える孤独に気づき、その孤独を癒そうと試みる。チャールズ、ベリンダ、探偵。3者3様の思いが交錯し、たどり着いた結末は。

「愛するということ。それはお互いを見つめあうことではなく、同じ方向を見ることである」という作家のサン=テグジュペリが残した名言に対して、「まぁそうなんでしょうな」と感じながらもどこが訝しげに思っていた自分にとって、この『フォロー・ミー』はその名言を真に納得させる上で十分なテキストになったのではないかと思う。「恋愛は結婚へのパスポートではないわ。好きでなくなったらそこで結婚も終わり。毎日新しい感覚、新しい感情、新しい何かを見つけ、喜びに包まれていたい」――つまり愛に必要なのは、2人が同じ方向を見ることによって生まれる共感、そしてそれによって得られる、あふれる喜びなのである。

 それにしても、『フォロー・ミー』は、リチャード、ベリンダ、探偵、少なくとも3つの視点から鑑賞が可能だけれども、自分はやはり、白いトレンチコートを着たひょうきんな探偵の姿に共感しないわけにはいかなかった。

 白いトレンチコートを見た瞬間からこの男が果たしてどういう位置づけのキャラクターなのかは気付いた。「白無垢」とは花嫁姿のことを指すけれども、男が白い衣装を身に纏うと、「道化者」「変人」「狂人」などの、あまり宜しくないイメージを喚起させられてしまう。『天井桟敷の人々』の主人公のパントマイム芸人は報われない男だったし、『時計じかけのオレンジ』の少年4人組はろくでなし、『ファニー・ゲーム』の男2人はこれまた救いがたいほど趣味の悪い悪人で、『鋼の錬金術師』に登場するキンブリーは快楽殺人者。みないずれも共通して白ずくめの衣装だった。

 ただでさえ目立つ色のコートを、秘密主義に徹するはずの”探偵”に着せるという時点でなんらかの意図が込められているのは明白。それはつまり道化者の役割を果たすために配されている。愛する人のために必死に道化を務めようとする探偵の姿が切なくてしょうがないが、それにもまして体の芯を温かくしてくれるような余韻が得られるのはこの映画のうまさだ。ミステリアスな雰囲気にジョン・バリーの音楽が絶妙にマッチし、忘れられない映画体験をさらに強固なものにしてくれる。ずっと手元に置いておきたくなる一本だ。


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テーマ:映画感想
ジャンル:映画
コメント
これさ、
ずっしーーんと来てしまいました。 どっかーーんとも言うか。 笑

何か実生活とかぶったりかぶらなかったり?(笑)
・・・って考え始めるともう、こういう名作系統は外せないんですね。
これもDVD買わなきゃ。

で、このblogはTBはカットしてるの?
2011/01/10(Mon) 20:37 | URL | rose_chocolat | 【編集
>rose_chocolatさん
「午前十時の映画祭」にはわりと懐疑的だったんですけどねぇ。実際、『大脱走』とか『明日に向って撃て!』とか『ニューシネマパラダイス』とか『フィールドオブドリームス』とか、自分は世間ほど高く評価しているわけではなく。でも外れはないし、脳髄にヒットしたときの衝撃度は計り知れない(笑)。

こういう企画が成功を収めて2年目も開催にされる運びになったのは素直に嬉しいですよね。当たり前かもしれませんが、やっぱりみんな「面白い映画を見たい」と思っているんだな…ということを実感できました。綿密なマーケティングのうえ撮られた映画とか、情感偽造に長けた映画とか、もうそういうのはいいですよね。我々がただの”消費者”としてではなく、名も無き1人の観客としてそれぞれがレスペクトされるようになって始めて日本の映画文化は真に成熟していくんだと思います。

TB?カットしてないと思うけどなぁ


2011/01/12(Wed) 22:06 | URL | 三島 | 【編集
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2013/07/04(Thu) 01:08:27 | 
原題:FOLLOWME!/THEPUBLICEYE監督:キャロル・リード出演:ミア・ファロー、トポル、マイケル・ジェイストンTOHOシネマズ「午前十時の映画祭」『フォロー・ミー』サイトはこちら。<Sto...
2011/02/24(Thu) 01:18:52 |  NiceOne!!
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