上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
『あの夏の子供たち』(2009年,フランス) 

41639266_3335994914.jpg


 映画製作会社を経営し、プロデューサーを務めるグレゴワール(ルイ=ド・ドゥ・ランクサン)には3人のかわいらしい娘がいる。ケータイ電話をつねに手離せないほど仕事が多忙を極めていても、週末にはパリ郊外にある閑静な別荘で3人の娘と妻の家族全員で過ごすことを習慣づけていることからも分かるように、良き父親であるようだ。だが、会社の資金繰りが悪化し、首が回らなくなったグレゴワールはついには拳銃自殺してしまう。

 発作的とはいえ、自分が守るべき家族、また自分を愛してくれる家族がいながらの自殺。「娘が3人もいるのに自殺するなんて」、と、グレゴワールに対してわざと拒否感というか怒りを抱かせるような設定になっているとしか思えない。確かに自殺は”卑怯”であり”逃げ”かもしれず、人一人が抱える人生の重さを「遺族」と「負債」の二重で語るさまはシビアとしかいいようがないが、しかしそれでも自分は、家族が再出発する過程を眺めているうちに穏やかならざる気持ちをなどすっかり忘れ、見終わって、想像していたよりもずっと優しい映画だなと感じた。

 そう、”父は私たちを捨てて人生を降りた”というキャッチコピーからも本作は暗くて重い映画を連想しがちであるが、『あの夏の子供たち』で貫かれる瑞々しい映像と柔らかい雰囲気は、”死”に付随しがちな陰鬱なイメージを排除し、自ら命を絶った人間を頭ごなしに否定するのではなく、むしろその人が遺してきたものに対して光を当て、思いを汲み取り、知り、共有しようとする。監督はこの過程を、29歳という若さで撮ったとは思えないほど、極めて冷静に、沈着に、だが人に対する愛おしさを感じずにはいられないほど慈愛に満ちた視線で辿っていく。

 「その瞬間、パパは私たちのことを思い出した?」と、娘が母親に問いかける言葉は痛切である。母親が何と答えようとも、彼女たちは静かに目を伏せうっすらと涙を浮かべるだけ。けして誰も何かを主張することはない。しかし、物事が暗転し悲劇の極致に至っても、誰も叫ばず誰も喚かない点はこの映画にとってかけがえのない大きな美点であり、だからこそ、 それまでの思いが最後に流れる「ケ・セラ・セラ」の歌に収斂されていく演出がなおさら心を打つのである。

 こんな自分でも、生きることに対しての解像度をいくらかくっきりさせてくれそうな、優しい映画だった。





あの夏の子供たち [DVD]あの夏の子供たち [DVD]
(2011/03/26)
洋画

商品詳細を見る


スポンサーサイト
コメント
2010年の
ベストに入れてもよかったかなあ。
余韻を忘れてしまうんですよね。 こうしてレビューを読むと思い出すのですが。

リンク入れてくれてありがとー。
TBなんだけどつかないみたい。 何か制限かけてません? 他のFC2さんにはつくのに~
2011/01/22(Sat) 19:35 | URL | rose_chocolat | 【編集
>rose_chocolatさん
ようやく原因が分かったような気がする!
これでトラバいけると思います、たぶん・・・
よろしくお願いします
2011/02/05(Sat) 23:33 | URL | 三島 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック
管理人の承認後に表示されます
2013/07/10(Wed) 23:20:41 | 
原題:LEPEREDEMESENFANTS監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ出演:キアラ・カゼッリ、ルイ=ドー・ド・ランクザン、アリス・ド・ランクザン鑑賞劇場 : TOHOシネマズ六本木ヒルズ2009年カ...
2011/02/24(Thu) 01:19:51 |  NiceOne!!
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。